皆さまこんにちは!水処理チームのKSです。還暦を過ぎ、水処理チームの平均年齢をやたら吊上げていますが、チーム経験はやっと1年の新米社員で周りのベテランに支えられながら日々仕事をこなしています!

さて皆さま、水族館の建物の北と南には、配管でつながった円筒状の器械が整然と並んで設置されている場所、目にしたことがあるでしょうか?この円筒状の物が今回紹介する濾過槽になります。

濾過置き場

以前アップしたブログ「水処理ってなに?」中で、“生きものたちが健康的に暮らせて、なおかつ透き通って見やすい水”を作るのが仕事の目的と記載しました。その水をきれいにするために、なくてはならない装置が濾過槽になります。

水族館では幅30cmの小さい水槽から幅14mの大水槽までさまざまな大きさの水槽を目にすることができます。大きさだけではなくそこで展示している種類も魚、ペンギン、アシカ、アザラシ、イルカなど多種多様です。これらの水槽には必ず濾過装置が備えられています。
動物たちが食べた餌は代謝産物として水中に排せつされ、水の汚れとなります。排せつ物の固さは動物によって異なりアシカ、アザラシ、ビーバーなど比較的固形で、魚類、イルカなどは液状で水に溶けやすいものとなっています。その他に水を汚すものとしては、餌のかす、魚の鱗や体液、動物の体毛やペンギンの羽根、ちょっと意外なものとしては、自然光が入っている水槽で時として発生するプランクトンなどがあります。
これらの汚れが水中の懸濁物となって、水槽の濁りとして確認されます。毎日行う朝の点検では各水槽を回りそれぞれの濁りの状態をチェックし、対応を検討します!
この懸濁物を取り除く装置こそ濾過槽であることは皆さん想像つくかと思いますが、実は濾過槽は大きく2つに分けることができます。
その形状から、濾過槽が密閉された容器となっている密閉式濾過槽と、箱型で上部が密閉されていない開放式濾過槽です。

密閉式濾過槽

皆さまが目にすることのできる屋外の濾過槽は全て密閉式濾過槽です。この濾過槽の特徴は、水槽の水を配管に通してポンプで濾過槽上部へ押し出し、充填された濾材を通すことによって濾過を行い、下部の集水装置を経て水槽に戻すという仕組みになっています。このサイクルで水槽の全水量は1~2時間かけて1ターンする流量にしています。

集水装置(集水ノズル)

配管の途中にはポンプが設置されていて、流速を早めることにより(10~23m/時)濾過面積を小さくし、結果的に濾過槽の設置面積も小さいスペースにすることができます。仙台うみの杜水族館では、予め建物に組み込まれたコンクリート製の中・大型水槽は全てこの濾過方式になっています。
密閉式濾過ではポンプへ入り込む配管の途中にバスケットストレーナーを設けている水槽があります。

バスケットストレーナー外観

縦型ドラム状のバスケットストレーナーを配管に接続して、内蔵したバスケット型の金属で固形の排せつ物、体毛、羽根などの粗ごみを取り除きます。これらのゴミがポンプまで行ってしまうとポンプの羽根車に引っ掛かりポンプの損傷の原因になるからです。また濾過槽の目詰まりによる負荷の軽減にもなります。

ゴミの詰まったストレーナー左と、洗浄後のストレーナー右

一方、開放式濾過槽は、金属の架台の上にFRP(繊維強化プラスチック)やアクリル製の水槽が置いてある移動可能な水槽で主に使われています。ポンプは濾過槽内や濾過槽の後におかれていて、濾過槽を通した水を水槽へ送りあふれた水が濾過槽に落ちる仕組みになっています。

開放式濾過槽

濾材の下には密閉濾過と同じような集水装置(集水管、多孔板など)を設置しています。
濾過面積は水量の割合に対して密閉式より広く、流速が遅い分、懸濁物の除去、分解に優れています。しかしその反面、設置スペースを取るため海獣類や鯨類などと比べ、排泄量の少ない魚類系の水槽で使用される傾向があります。
さて気になるところは濾過槽の中身ですね。
次の写真をご覧ください。濾過槽の中の様子がわかる模型です。

濾過槽模型

一番上の黒く見える層は、アンスラサイトで無煙炭を粒状にしたものです。その下は、細かい珪砂で直径0.6~1.2mm、その下の各層は支持層と呼ばれ一回りずつ大きな砂利が敷かれていて、各層は混じり合わない仕組みになっています。この砂や砂利をひっくるめて濾材と呼んでいます。珪砂の層は実際には40cm前後の厚さで、この層が懸濁物を物理的に濾したり、珪砂表面や多数の孔に付着しているバクテリアによって生物化学的濾過の主要部分を担います。またアンスラサイトを入れることによって大きな懸濁物がアンスラサイトに、小さな懸濁物が珪砂に補足されることにより、濾過能力の向上と目詰まりの期間延長が望めます。ちなみに、アンスラサイトと珪砂による濾過を多層濾過、珪砂のみの濾過を単層濾過と呼んでいます。
「生物化学的濾過」についてはまた別の機会に詳しくご紹介するとして、最後に水処理チームが日々一番時間を割いて従事している作業、濾過槽の逆流洗浄、略して「逆洗」について!
停電でも起こらない限り、濾過槽へは絶え間なく循環水を通しています。当然濾過槽には前にあげた残餌、排せつ物、体毛、羽根などが濾材の表面に堆積し、濾過槽は徐々に閉塞します。それでどのくらい濾過槽が詰まっているかを客観的に知るため、濾過槽の水の入り口と出口には圧力計が取り付けられていて、その圧力差を毎朝チェックし目詰まり具合を判断しています。

圧力計

ちなみに0.06メガパスカルの圧力差があれば、当日のうちに逆洗を実施しています。(ほとんどの場合は、長い経験によって作成された水槽ごとの逆洗スケジュールに従って実施していますが。)
逆洗はこのように濾過機能が低下した時に実施されます。その方法はいたって簡単で、通常とは逆に水を流し、濾過槽の表面に堆積した懸濁物を排出します。この時一番上の層のアンスラサイトや砂が流されず、なおかつ米を研ぐように砂が流動する水量にすることが大事です!流水が強すぎるとアンスラサイトや砂も流れてしまいますからね!
また逆洗の前には、水を一定量貯めた濾過槽内へ空気を下から送り込み、濾材表面をほぐす「空気洗浄」を行うと、より逆洗効果が上がります。
逆洗を行うと濾過槽の圧力差は0となり見た目の機能は回復します。(見た目といったのは他のマイナス要因も生じるからですが、それもまた後ほどに)
水をきれいにするための濾過装置。実は濾過装置以外にもいろいろな方法を駆使し、それぞれ生きものにあった水を作っています!
今後も水処理チームのブログ、どうぞお楽しみに!